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ゆらゆらと。

カルテアの星の雲の上。

ゆらゆら揺れる雲に身を任せ、目をつむっている赤い長髪の男の子が1人。

目をつむっているからと言って、瞑想しているわけでも、
考えにふけっているわけでもありません。

今日も何にもせずに、ただ眠りをむさぼっています。

「えい!」
「いてえ!」

そんなディオンを見かねて、妖精のエクセルが小さい手で
ディオンにデコピンをしました。

小さい手といっても、結構な威力があるように見えました。

「って~。何すんだよエクセル!」
「何じゃないわよ!またぼーっとして!」
「俺にはぼーっとする時間も必要なんだよ」
「さっきから見てたけど、ずーーーーっとぼーーーーっとしてたじゃない」
「……見てんなよ」
「もーっ!」
あきれ顔のエクセル。
何とかディオンを起こそうと髪をひっぱりだしました。
「こら、やめろって!いてててて!分かった起きるから!」

やっと起き上がったディオンに、エクセルは満足げ。

「ったく。それで、地上の様子はどうなってる?」
「それがいいニュースがあるの!」

デヴィーチェ(6惑星間の大戦争)が終結してから、カルテアの星の民は復興に向けて動いています。
そんな折、カルテアの君と6惑星でも3大美人とうたわれる女性、レフィルとの婚姻が発表されたのです。

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「へえ」
「へえって何よー。もっと喜びなさいよ!おめでたい話じゃない!結婚だよ結婚!
いいなあー」
「いいなあーって…。まだちゃんと決まったわけじゃないんだろ?……まあいいや」
またエクセルにお説教される前に、ディオンは話を変えました。

「確かに!おめでたい話題だな!やったあ!」
「そうでしょー!きゃあ!」
「ハハハ…」
やけにテンションの高いエクセルに押され気味ですが、ディオンも内心では喜んでいます。

(復興中とはいえ、明るい話だよな。これでカルテアの民が少しでも元気になってくれれば…)

ぞわっ。

「…!?な、何だ!?」
「どうしたの、ディオン?」
「い、今すげえ嫌な感じがした!なんか凄く不穏な……。
あっちからだ!」
「あ!待って!」
そう言うなり、ディオンは雲の上を飛んでいきました。
エクセルも続きます。

_________

「はあ…」

カルテアの星の西に広がる山々の1つ、トラトム山岳地帯の片隅に、古城がありました。

古城の名前はファイゼン城。

その古城の一室で、窓から外の景色を眺めてはため息をついている女性が1人。
傍らのサイドテーブルには、花の代わりに角の生えた兜が置かれている。
彼女のものだ。

ため息をつく理由はいろいろとあった。

デヴィーチェの時、彼女は騎士だった。
勇猛果敢だった彼女は多くの仲間を失い、残る己の部下の騎士たちとこのファイゼン城へと拠点を移した。拠点を移したといえば聞こえはいいが、要は騎士の地位を失い、住む場所も無くし、落ち延びたのだ。

そんな状況下において、カルテアの君を君主とする王都ではいい話が持ち上がっているそうだ。
それも彼女を憂鬱にさせる要因でもあった。

「バーバラ様ー」
部屋の外から彼女を呼ぶ声が聞こえる。

バーバラ・アデルフォスはもう一度、外を見ながらため息をついた。

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