ソフィアを物陰から見ていた小男は、何やら獲物を見つけたかのような目をしてその場を後にした。
ソフィアはその事には気づかず、配達屋レックスを見送ってそのまま街に留まるため、宿屋を探した。

______
「ねえディオン。あの子大丈夫かな?」
「ん?」
「ソフィアの事だよ」
「あの子よりも俺が気になってるのはバーバラだ」
「どうして?はっ!まさかスタイル抜群!グラマーだから!?」
「バカ!どうしてそうなるんだよ!」
ディオンはエクセルのヤキモチにふぅとため息をついた。
エクセルは不思議そうな顔をディオンに向けた。

「あの嫌な気配はバーバラからしてた。女の未練っていうのかな。まだ可愛いものだが、放っておくとどうなるか…。
今のうちに解決したいところだな」
「そうなの………何か方法はある?」
「結構な荒療治だけど、ないことはないかもな」
ディオンはソフィアを見ていた小男を指して言った。

______

ソフィアは宿を取り、部屋に入っていた。
質素だが、きちんとアイロンをかけられたベッドシーツ。レイの光が入る小さな出窓。壁に掛けられた一輪の花。
ソフィアには今はそれで充分だった。

そっとベッドに腰かけた。

一呼吸し、背筋を伸ばす。

眼で出窓から見える外の景色を追ってみたが、雲一つない空が広がっているだけだった。

(私の今の気持ちとは大違いね)

そう思ったが、仕方がない。
そしてこのまま部屋でじっとしているのもなんだからしくない気がして、必要最低限の荷物しか持ってきていなかったが、その荷を置き外へ出かけることにした。

______

宿の外へでるとそこはこの街のメインストリートだった。
商店がいくつか並び、街の人々が行きかっていた。

今は夕暮れ前。

空も色が変わり始める頃

スポンサーリンク

ソフィアは騎士団詰所に行くかどうか迷った。
ここの騎士団は王都から配属されている騎士達がいるところ。
バーバラ様の失墜も聞こえているかもしれない。
顔を出していいものかどうか。

それでも礼儀として一度訪ねておくべきかと、足を向けた。

アルデイル騎士団詰所―――。

「貴様、見た顔だな」
「私、バーバラ・アデルフォスの配下、ソフィアでございます。
この度、この街に立ち寄らせていただいたので、一言挨拶をとお伺いした所存でございます」
「ふむ。しばし待て」
「はっ!」

一時過ぎた。
ソフィアの話を奥にしに行った兵士が戻ってきた。

「ソフィアといったな」
「はっ!」
「アルデイル候は今お忙しい身。会うことは出来ん。『アデルフォスの配下の者よ。ご苦労である』との仰せだ」
「はっ!それでは失礼いたします」

ソフィアはそれだけ言って、騎士団詰所を出た。

(アルデイル候……)
体よく帰されたが、これでよかったのかもしれない。

そのまま通りを歩くと、小男とぶつかった。

小男の方が倒された。

「すまない、よそ見をしていた。怪我はないか?」
ソフィアは男に手をかした。

「いえいえ大丈夫ですよ。すいませんねえ。あっしもボーっとしていたもんで」

男はひょいっと立ち上がった。

男はボロいマントをしていて、黒の上着に茶色のダボっとしたズボンを穿いていた。

「や!やや!」
「?何だ」
「姉さん美人だね!こりゃたまげた!えらい美人だ!」
「な、何を」
何を言い出すのかと、ソフィアは困った。
「あっしはしがない商人なんでさあ。姉さんに似合いの宝飾品もございます」
「悪いが、私はそういうものには興味がないので。失礼」
ソフィアはそう言ってその場を立ち去った。

「そいつは残念だ…ファイゼン城のソフィアさん…けけけ」
男は小さく笑った。
その頭の中には、ソフィアから奪い取ったほんの少しの情報があった。
男は下位だが魔法が使えた。
3つの紋章を持つ魔法使いだ。

カルテアの星の魔法使いはみな、身体に魔法の根源となる紋章を持っている。
この男は3つの紋章を織りなした複雑な魔法は使えはしないが、それでも男には十分だった。

「さっそく頭に報告だ」
男もまた足早にその場を後にした。

スポンサーリンク