洞窟の奥からリュリの声が聞こえてきます。

「はい…ラリー…様……今、天人……はい…」

声は小さく途切れ途切れにしか聞こえません。

(リュリ…?)

不安そうに身をひそめるエクセルを、ディオンはまだそのままでいるようになだめます。

(ねえ、ディオン…)
(なんだ?アモ)
(この洞窟、僕嫌な感じがするよ…早く出たほうがいい)
(本当?アモ)
エクセルはアモの言葉にますます、不安になってきました。

(確かにな。何か出そうな……いや!本当に何かいるぞ!)

ディオンは洞窟の奥、リュリの居るさらに奥から何かがざわりとはい出てくるのを感じました。

「きゃあ!」

それと同時にリュリの悲鳴も聞こえてきました。

「リュリ!」

エクセルはリュリの元へ、踊り出ようとします。
そんなエクセルを見かねて、ディオンはエクセルよりも先に、さっと身をひるがえし、リュリの元へと現れました。

「あれは!」
アモが続き、はっと声を上げます。
「夢喰いトーナーだ!」

ファンタジー小説DEaR HEART 挿絵

夢喰いトーナーはどこにでも棲みつき、大きさもその食べた夢に比例して大きくなっていく。
灰色とも暗い碧の錆ネズミ色ともとれるような色を浮かべ、身体は雲のようにもこもことしている。
ただ口だけが異様に大きく、その名の通り人々の夢を喰らって生きている。

人々の夢を叶える存在である天人や雲に住む生あるものは、夢喰いの恰好の餌だった。

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洞窟の奥の奥から出てきた夢喰いは、非常に大きいものでリュリをあっと言う間に喰ってしまいそうだった。

「リュリ!逃げて!!」

エクセルは叫んだ。

ディオンは天人の持つ力、柴力(さいりょく)を用いて、夢喰いトーナーの身体の動きを止めた。

「今の内だよ!」

アモはリュリを手で引っ掴み、エクセルも連れて洞窟の外へと走った。

機を見て、ディオンも柴力を解き、急いで洞窟の外へと飛び出した。

夢喰いトーナーは、4人の後は追わずに、また洞窟の奥の奥へと戻っていったようだ。

「助かった…?」
アモは声に出して言った。

「ああ。何とかな…」

ディオン達は洞窟から少し離れたところまで来ていて、そこでようやくディオンは腰を下ろしていた。

「リュリ―!!」
エクセルは、放心状態のリュリをぎゅーっと抱きしめた。

リュリはそこまでされてようやく、ハッと気づいたようで。
「わ…私…」
「リュリ―!大丈夫?怪我はない?」
「エクセル…」
リュリは自分を抱きしめて離さない、エクセルと2人の天人たちを見つめた。

「あ、あなたたちが助けてくれたの?」

「危ないところだったぜ」
肩をすくめてディオンは返した。

「ところで…」
「一体何を洞窟の中で話してたの?」
アモはリュリに尋ねた。
「今、東の雲。ここで何か起こってるんじゃないかと、僕たちは来たんだ。何か知っていることがあるなら教えて欲しい!」
「……」
「知ってることあがあるんなら話した方がいいぜ。アモは俺より凄いんだぜ?」
「ディオン!」
ディオンの言った事は嘘か誠か。それよりも茶化さないでと、アモ。
「リュリ…あなたが無事なら私はそれでいいの…」
エクセルはリュリの瞳をまっすぐに見つめました。
「…分かったわ。変な天人さんたち。私の知っていることを教えてあげる」

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