東の雲の入り口にいるディオン達は、軍事国家トートリオまで急いでいます。
天人2人と妖精2人が、雲の上をひとっ飛び。
「大丈夫か?エクセル、リュリ」
ディオンは遅れを取らないようについてくる妖精2人を心配します。
「私は大丈夫。リュリは?」
「なんてことないよ」
リュリの方は肩をすくめてみせました。
「早く!早く行かないと!」
「アモ。その気持は分かるが、少し落ち着け」
「でも」
「焦っても、何の解決にもならない。大事なのは冷静に行動することだ」
「ディオン…」
アモはディオンの言葉を聞いて、心を冷静に保とうとします。
その様子を見たディオンも、頷きました。
「ほら、もう見えてきた!」
東の大陸の中央に位置する軍事国家トートリオ。
その城の上空にディオン達は到着しました。
「トートリオンはどうやって、カルテアの君への謀反を企てているのかしら」
「それを探る必要があるな」
エクセルの問いに、ディオンはこれからする事を言いました。
「直接トートリオンに近づくのはまずい。例の天人が側にいる可能性が大きい。
かと言って、こちらが気づかれるのもまずい」
「トートリオンには家臣が何人かいるよね。彼らを探るのは?」
「それ!そうしましょう!」
エクセルは名案とばかりに、アモに同意します。
「そうかな?良い案とは思えないけど…」
「何言ってるのよう。リュリも手伝って!」
「…しょうがないなあ」
リュリは仕方なさげに、手伝ってくれるようです。
「よし、行こう」
ディオンの合図で、4人は動き出しました。
トートリオの城は重圧な壁に囲まれ、とても息苦しい感じにアモは捉えました。
城の中も警備が厚く、人に姿が見えない天人で無い限り、
戦わずして切り抜けるのは困難でしょう。
その城の中を4人は、すーっと飛んでいきます。
「ここじゃないかな?」
エクセルが指し示したのは、家臣達がいる部屋でした。
何か話をしているようで、4人は扉をすり抜けて、部屋へ入っていきます。
「しかし、無茶ではないだろうか?」
「カルテアの君への反逆。失敗すれば我らはどうなる…」
「だが、王に逆らうわけには…」
家臣達はおいそれとカルテアの君への謀反を良く思っているわけではありませんでした。
ですが、王を恐れて何も言えません。
「何を言う!王の命こそ絶対!我らはカルテアの君に仕えているわけではない!
王に仕えているのだ!」
1人の家臣がそういうと、他の家臣にもそれが移ったかのように。
「だが、そうなると今回の策で上手くいくだろうか?」
「貴様は、いつも弱腰だ。表向きはカルテアの君への和平の使者。
しかしそ奴に毒を盛らせ…」
「その隙に進軍するのだ!」
「何だと!」
ディオンは怒りを言葉にしました。
「大変だわ…!」
エクセルはただならぬことと知り、身じろぎしました。
「早く、ここを離れましょう」
リュリはこの部屋から一刻も早く出るように3人を促しました。
部屋から出た4人は廊下の突き当りまで移動します。
「………」
4人に沈黙が少し訪れます。そして。
「カルテアの君に知らせなくちゃ!」
「今からじゃ遅いんじゃない?」
アモの意見を、リュリは否定します。
「いや、今すぐカルテアの君に知らせる必要がある」
ディオンは続けます。
「俺が行く」
「どうするの?」
「ティニアの泉の力を使う。エクセル、お前はアモとリュリと残って、
トートリオンと、その天人を探せ!」
「どうやって知らせるの?」
今度はリュリが聞きます。
「この東の雲の上にもあるティニアの泉の力を使って、王都へ信号を送る。
カルテアの君ならきっと受け取ってくれるはずだ」
ディオンはカルテアの君を信じました。
「分かった、僕達は天人を探すよ!」
「さあ、急ごう!」
「気をつけてね、ディオン!」
「ああ」
ディオンとアモ達は別れて行動を開始しました。