王都、王宮の藤の間。

「それで、どう動く?」

カルテアの君は3騎士の1人、赤い髪のカイザ・アックスフォードに尋ねます。

「はい。まずサラを連れていきます。サラ!」
「私?んーしょうがないなあ。カルテアの君の為だもんねえ」

サラは王都の魔法使いです。優秀でカルテアの君の魔法使いとして側で仕えています。
ウェーブがかったピンクの髪を肩で切り、大きい赤いベレー帽を被り、得意そうにしています。

「そしてあと2人。カルテアの君の騎士を。その者たちに、カルテアの騎士が扱える、
ひずめの結界をトートリオの国を囲んで張り巡らせます。
あとは私が」
「ふふ、そう上手くいくかな」
「お任せください」
「頼んだよ、カイザ」
「はっ」

カイザは一礼してカルテアの君の藤の間を決意して後にします。
サラも続きます。

「カルテアの君」
「なんだい?」
「いささか楽しそうに見えるのは私のきのせいでしょうか?」
「ランゲージ。心配するな。私は楽しんではいないよ」
「ならよいのです」

ランゲージと呼ばれた紫がかった銀髪の髪の長い青年は、この日めずらしく藤の間にいました。
白いローブに身を包み、カルテアの君の隣でにこにこと笑っています。
カルテアの君は彼の事は意に止めず、カイザを送り出したことを想いました。

そしてディオンの事を。

__________

カイザの行動は素早かった。

カルテアの星では移動手段として一般的に用いられる馬の他に、
カルテアの魔法使いの力で動かすことが出来る乗り物、神馬(シンバ)とがあります。

カイザはサラの力を使い、神馬を用いてトートリオへと一気に進みました。

__________

ディオンは一目散にトートリオ目指して空を飛びます。
残してきたアモやエクセル、リュリの事を信じて。

「アモ…今行くからな」

ディオンは東の雲のティニアの泉に来る途中で出会った、石像のような女の居た場所を
少し注意しましたが、もう姿はみえませんでした。

そのまま真っすぐトートリオへとたどり着きます。

ディオンはトートリオの城へと降り立ちます。
アモとエクセル、リュリの気配を感じましたが、他にもう1人いることに気が付きました。

(…この力。ただ者じゃないな…)

ディオンは考えます。
(天人同士で争うなんて馬鹿げてる。じゃあどうする?)

ディオンはその相手を退かせる方法を見つけました。

その答えはカルテアの星の人間が持っていると気が付きました。

外に気を配ると、カイザとサラ、2人の騎士達を乗せた神馬が到着しています。

どうやらトートリオの兵たちを上手くかいくぐって、侵入出来たようです。

「サラ、ご苦労だった」
「どうってことないよ」
サラはまだまだ余裕と手で素振りを見せました。

「よし、2人の騎士よ。カルテアの君の為、その力を見せよ」
「はっ」
「いきます」

2人の騎士達はトートリオを囲むように薄い紫のひずめの結界を張りました。

トートリオの兵達は気づきます。

「これは!!」
「カルテアの君の騎士の…!」
「攻めて来たのか!?」

兵達は混乱していました。

指揮する者もおらず、悪い気配の立ち込める家臣たちの動きを心ばかりか察していたのです。

王の寝室では。

「何事だ!?」
「トートリオンよ。案ずることは無い。
早くカルテアの君を」
王トートリオンは王の寝室からテラスへ出て空を見ます。

空には暗雲が立ち込め、空気は澱んでいました。

トートリオンをそそのかそうとするラリーアレスはさらに続けます。

「トートリオンよ。兵たちを指揮し、カルテアの者を」

「王!」
「騙されないで!」
エクセルは叫びます。

そこへディオンがやって来ました。
そしてトートリオンに姿を見せます。

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「王よ。目を覚まされよ」
「そなたは!」
「これがあるべきトートリオの姿か?
トートリオの兵達は一様にたじろいでいる。
混乱している。
不安に怯えている。
トートリオンよ。
目を覚まされよ。
悪しき意志に惑わされてはいけない。
トートリオンよ」

ディオンは己の内に秘める想いの輝きの力を使います。
トートリオンをあるべき姿に戻すために。

ディオンの輝きはトートリオの地上へも広がりました。
そしてカルテアの東の雲、天高く広がりを見せました。

その輝きがようやく消えた後。

「私は…」

トートリオの瞳に輝きが宿っています。

その傍らにいたラリーアレスはその場を退いていきます。

「待て!」
アモが後を追おうとしますが。

「ディオン!」
エクセルはディオンの側へと羽ばたきます。

「エクセル…アモ…」
「ディオン!しっかりして!」
「俺は大丈夫だ。アモ…」
「ディオン…」
アモはディオンに駆け寄りました。

「ラリーアレス様…」
リュリは小さく呟きましたが、それは決別の意でもありました。

__________

トートリオンが座る王の玉座の前にカイザは居ました。

「トートリオンよ」
「私はどうかしていたのだ。
我が家臣たち。我が兵達よ。
すまなかった。
カルテアの君に背くなど。
カイザ殿…どうかこの国は…」

「それはカルテアの君から」

カイザがそう答えると、そこへ1人の麗人がやって来ました。

「カルテアの君」
「トートリオンよ。もう1度、私に仕えてはくれぬか?
この星の為に。
私と共に明日を見ぬか」
「カルテアの君…!」

トートリオンはカルテアの君の意を感謝して受け取りました。

_________

トートリオの城の上空にディオンとエクセル、アモ、そしてリュリが居ました。

「よかったー!」
「ホントね!エクセル!」
エクセルとリュリは2人で手を取り合ってくるくる回っています。

「何とかなったな…」
「ディオン」
「結局アモのお兄さんじゃなくて、それもよかったー!」
「そうだな…」
「でも兄さんは一体どこに…」
「う!」
ディオンは誰かに気が付きました。

「アモ―――!」
「え!?に、兄さん!?」

アモと同じ金髪の髪を肩で切りそろえた、1人の天人がもの凄いスピードでやって来ます。

「アモ!無事だったか!」
そしてそのままアモを力いっぱい抱きしめました。

「痛いよ!兄さん!」
「出た…サリー」

ディオンは少しあきれ顔で、アモの兄サリーを見ます。

「久しいな、ディオン。エクセル」
「まったく…!」

サリーはようやくアモを解放します。

「今回の件、苦労を掛けたようだ」
「兄さん、一体どこに居たの?」
「ああ、アモ。私はファーレル様の使いで少しね」
ファーレルとはユナ様の元、東の雲を見守る天人達を束ねている天人です。

「それで?」
「今回の件、ファーレル様はラリーアレスを捕らえて、今再び修行をさせているよ」
「本当ですか!?」
驚いたのはリュリです。

「捕まえたのか?」
「ああ。彼は私と同じく修行をした身だ。きっと元のラリーアレスに戻ってくれる」
「兄さん…」
「すまないな、ディオン。アモ。そしてそこのお嬢さん達」
「いえ」

サリーはラリーアレスの代わりに深く詫びました。

「ま、そういう事なら後は任せるさ」
「ディオン…」
エクセルはディオンの肩に乗り、顔に触れました。
「何だよ?」

ディオンは力を殆ど使い果たしてしまいました。
今は雲の上を飛び回ることと、ほんの少しの力しか残っていません。

「帰ろうぜ」
「ディオン…!」
エクセルはぎゅっとディオンに抱きつきました。

「私は…」
「リュリもおいでよ!」
「いいの?」
「ディオン!アモ!」
「勿論」
「しょうがないな」
「…よろしくね」
リュリは少し照れました。

「兄さん。僕、行くね」
「アモ。行ってきなさい。
私はいつでもこの雲で、お前を見守っているよ」
「行ってきます!」

こうしてディオンとアモ、エクセル。そしてリュリは東の雲を後にしました。

                            ~第3章~ 空での内戦 end~

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